そんなこんなで10日ぐらい間が開いてしまいました。もっとこまめに更新しないとダメだね! とはいえ、毎回プレイしなおしているので、エンディングがあるゲームは「そこまで」到達しないと記事を書くことすらできず……。歯がゆいね!
言い訳はさておき、25回目の更新はおそらくナムコットコレクションには移植されないと思われる「時代の仇花」的タイトル!
ナムコットタイトルの24弾で、発売日は1987年4月2日。発売当時のファミコンソフトとしては珍しいアドベンチャーゲーム(もちろん、まったくなかった訳じゃない。『ポートピア連続殺人事件』とか『水晶の龍』とかね)で、アクションゲーム、シューティングゲームに定評があるナムコの新境地タイトルとして、当時話題になったとか。
タイトルにもなっている「さんま」は、秋の風物詩であるダツ目サンマ科の魚……ではなく、今なお第一線で活躍し続けているお笑い芸人・明石家さんまその人。当時は『オレたちひょうきん族』や『笑っていいとも』などのバラエティ番組だけでなく、『男女7人夏物語』などのドラマにも出演、さらには自他ともに認める音痴にも関わらずレコードを出すなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの人気芸人だったのだ。その明石家さんまを主人公としたゲームが、『スーパーマリオブラザーズ』を中心としたファミコンブームの勢いに乗ってリリースされるのは至極自然な流れだった……。が、実はこのゲーム、明石家さんまや登場する芸人に許可を取らず、吉本興業が水面下で交渉して発売にこぎつけたという曰く付きの一本だったりする。そのため、肖像権の問題などもあり、バーチャルコンソールなどでの復刻は難しいタイトルだったりする(登場人物に故人も多いしね……)。
ゲーム自体はオーソドックスなコマンド選択式アドベンチャーゲーム。主要コマンドがアイコンで表示されているのは、当時の流行なのかな? 特徴的なのが「どつく」と「さんま」コマンド。前者は目の前にいる人物を殴る、後者はさんまに思いつくまま行動してもらう……というもの。どちらもおふざけコマンドなのだけれども、要所要所で使うと事態が打開できるというのが面白い。
また、移動はマップ画面で行うというのが特徴のひとつ。ストーリーが進むたび、マップに移動先が増えていくのが楽しいのだ。吉本のおひざ元である大阪を舞台にしていて、住之江や道頓堀、千里が丘などなじみのある地名も多い。新幹線の右側にある3カ所は東京エリアで、新宿にはスタジオアルタ(『笑っていいとも』を放映していたスタジオ)の特徴的な電光掲示板も見えるのだ。
アイテムも一覧で見ると外観がわかるようになっているのが楽しい。味気ない文字列だけでなく、実際にビジュアルで見せつけられるとなんだかワクワクしてくるよね。こういう風に、ファミコンキッズのためにビジュアル面を強化してきた本作が初のアドベンチャーゲームだったというユーザーも少なくなかったとか。
また、BGMなどに往年のナムコタイトル(『ディグダグ』『ゼビウス』『ワルキューレの冒険』など)で使われたメロディが引用されていたり、ミニゲームで自社タイトルのパロディをしていたり、映倫ならぬファミ倫の許諾番号が7650だったり……と、随所に遊び心があふれている作り。当時はほとんど気にしてなかったけどね!
プロローグは意外とシンプル。
吉本興業社長である吉本高行(よしもとたかゆき→よしもとこうぎょうのシャレ)の別荘新築パーティで、落語家の桂文珍が殺された。殺害現場は金庫室。ここに収められていた特大のダイヤモンド「アフリカの星」も姿を消していた。犯人は文珍にダイヤを盗むところを見られて殺されたようだ。容疑者は、パーティ出席者の吉本芸人たち。君は明石家さんまの助手となって、謎を解け!
こんなところ。しかし、容疑者の証言を集めていくうちに、暗躍する闇の帝王や密輸貿易、文珍が所持していたという「幻のネタ本」の行方など、さまざまな事件が錯綜していく。あっちこっち移動しては情報収集というのはADVの基本だね!
登場する吉本芸人は主人公である明石家さんまのほかには、桂文珍、オール阪神・巨人、太平サブロー・シロー、今いくよ・くるよ、島田紳助、西川のりお、横山やすし。これに吉本高行と娘のあやこ、そして謎のインド人宝石商のチャタ。インド人宝石商のチャタは、1976年頃に日本で演歌歌手としてデビューしたサラブジット・シング・チャダ氏をモデルにしていたり。当時の小学生にはわからなかったけど、ちょっと上の世代には丸わかりだったらしい(あと「あの人は今」に出てたしね)。
ちなみに、このうち太平シロー、今いくよ、横山やすしは故人となり、島田紳助は不適切な交友関係によって芸能界を引退。相方が亡くなって漫才が続けられなくなったコンビもいるなか、オール阪神・巨人は元気に漫才を披露しているのは、なんかうれしくなる(なお、西川のりおも、ゲーム未登場の相方・上方よしおと漫才を続けている)。
金庫室に落ちていたコンタクトレンズを領収書とともにくるよにつきつけたり、最近スランプから抜け出したオール巨人に、脱出の理由を問い詰めたり。さらには闇の帝王に脅迫されたり、よくわからない話をする西川のりおに翻弄されたり、あからさまに怪しい態度をみせる島田紳助を追い詰めたり。ただ犯人を捜して問い詰めるだけでなく、「アフリカの星」に隠された謎も追うことになっていく。
イースターエッグ的な隠し要素も多く、いろいろなところを調べると変わったメッセージがでてくることがある。メッセージだけでなく、なかには専用グラフィックが用意されているものも! 温泉とか、レオタードとか、あやこちゃんサービスシーンとか!
たけちゃんは言うまでもなくビートたけし。うらべくねこは当時おばあちゃんアイドルとして人気を博していた女優・浦辺粂子が元ネタ。トントンは前年に上野動物園に誕生して、日本中の人気者だったパンダのトントン(童童)。そして額縁の裏のスイッチは、『ポートピア連続殺人事件』の仕掛けね。一応記述しとく。
ミニゲームも豊富で、捜査の過程でプレイするものも含めて合計5種類。1つ目は金田一耕助の親戚筋にあたるという金田七耕助の「探偵の極意を教えてもらうためのゲーム」。これは落ちてくる障害物に当たらないようにメモを取り、スタート地点まで戻るという単純なもの。でも、意外と難しい。中央に落ちてくる時計に触ると時間が停まるので、そのスキに一気に駆け抜けるのが攻略のコツだ。
2つ目はエアロビクス。エアロビクスといいつつ、ぜんまいネズミをジャンプで避け続けるという結構難しいゲーム。早めにジャンプしていったほうが、ミスしにくい気がする。しばらくジャンプしていれば、コンピュータが勝手にミスして終了になる。クリアに必要ないかと思いきや、実は「エアロビをして喉が渇く」ことがフラグになっているイベントがあるため、プレイ必須だったり(クリアは条件ではない)。
3つ目はボートレース。情報を賭けて、横山やすしと住之江競艇場でレースをするのだ。レースといっても、Aボタンを連打するだけ。当時は連射ブームだったからね、仕方ない。ただ、この横山やすし、本当に速いのだ。生半可な連射では勝つことができず、ここで挫折する小学生も多かった。いや、ホントホント。まぁ、連射付きコントローラであるジョイボールとかジョイカードとかを使って突破するんだけどね……。
4つ目は追跡。逃げる容疑者を捕まえる重要なゲームだ。真犯人以外は逃げられてもやりなおしが効くのがうれしい。逆にいうと、真犯人は絶対に逃がせないということに。犬と女の子に触れると足止めされてしまうが、事実上回避はできないので最短距離を突っ走ろう。移動先の建物のどこかに隠れているので、運に任せて突入しよう。ちなみに、なぜか道でうろうろしだすこともあるので、そこも狙い目だ。縦、横とも2区画ぶん離れてしまうと逃げられてしまう。紳助、シローはまたその場所に行けば再度ミニゲームが発生するけど、真犯人に逃げられるとゲームオーバーになるぞ。
5つ目は『ギャラクシガニ』。タイトルからわかるように、ナムコの名作『ギャラクシアン』をモチーフにしたシューティングゲームだ。プレイできるゲームセンターの名前はキャロット。モチーフはナムコ直営のゲームセンターチェーン『プレイシティキャロット』なのはいうまでもないかな。シューティングゲームとしての完成度は意外と高く、そこそこ難易度もあって面白いのだ。1000点ごとに土星か流星が出現し、土星を取るとボスUFOが出現、これを倒すとクリアになって捜査のヒントがもらえるのだ。このゲームでハイスコアを出すとマップにあるナムコビルに入ることができ、『パックマン』が遊べるという裏技……という名のウソテクが『ファミリーコンピュータMagazin』に掲載され、ナムコの営業すらも騙されたという(もちろん怒られた)。
文珍の家にあるパソコンにフロッピーを差し込むと、パスワード入力画面が表示される。これが世に言う「スハダクラブ」だ。この暗号は『ポートピア連続殺人事件』のコメイチゴと同じぐらい知れ渡っていた気がする。気がするだけ。局地的な可能性も高い。桂文珍はシャープのパソコン・MZシリーズのCMに出演していたので、そのつながりで自宅にパソコンを置いている……ということにされたのかもしれない。
捜査が進むと、東京にあるクラブ・ポピーに行けるように。やすし師匠に「今からタクシーで行こう」と誘われるのだけど、実際の横山やすしはタクシー運転手への暴行や暴言で過去に謹慎をしており、さらにはこのソフト発売後に実子の木村一八によるタクシー運転手への暴行で芸能界から姿を消すことになる。そういうことを踏まえると、このセリフはすごい重い発言に思えてくる……(そんなことはない)。
クラブ・ポピーにいるバニーガールのエミとエミコ。表立って言及されていないが、当時吉本興業に所属していたアイドルデュオ・ポピンズがモデルになっていたり。発売当時にはほぼ活動を休止していたというのも影響しているのかも……。
で、このクラブ・ポピーは闇の帝王こと西川のりおのアジトになっていて、うっかりすると捕まってしまう。なぜか内側にナンバーロックがあるドアを開けると、そこにはのりおが待ち構えていて、「アフリカの星」を追っていた理由が判明するのだ。アフリカの星に秘められた謎、それは古代の秘宝……。この謎を解明すれば解放されるぞ。
のりおから解放されれば、事件は終盤。証拠固めしてから真犯人――吉本のもとに向かおう。そして吉本を追い詰めて捕まえれば、いよいよ感動のエンディングだっ! ちなみに、ここで吉本を取り逃がしてしまうとバッドエンドになるので注意。
バッドエンドというと、このゲームには3つのバッドエンドルートが隠されていたり。ひとつめは前述の「吉本を取り逃がす」。そりゃ真犯人に高飛びされたらアウトだよね。ふたつめは「吉本にアフリカの星を渡す」。持ち主に返してあげよう……なんて仏心を出してしまうと痛い目を見るのだ。そして最後のひとつは「のりおと一緒に宝探しをする」。犯人を無視して金に目をくらむなんて……。
ファミコンのアドベンチャーにしては珍しいバッドエンドが3パターンもあり、要所のイベント以外はフラグを立てる順番も好きにしていいと、意外に自由度が高い構成になっていたり。この辺、ファミコンアドベンチャーゲームでも人気作である『ポートピア連続殺人事件』や『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』、『ファミコン探偵倶楽部』シリーズなどよりも完成度が高いと唸らされるポイント。
一方、難しい謎はほとんど存在せず、総当たりで突破できるという欠点も(コマンド選択式共通の問題点だけどね)。しかし、テキストで読ませるジャンルなのにビジュアルで攻めてくるあたりとか、コミカルなネタをイースターエッグ的に仕込んでおくなど、現代にも通用する部分も随所にみられたり。
簡単だというそしりを受けるけれども、やはり対象層がクリアできるというのは重要なんです。当時の小学生にとって「これが初のアドベンチャーゲームクリア」だったというパターンは多かったんですよ? これ、重要なポイントなんです。
出演者と事務所側のトラブル、逝去された出演者など、肖像権まわりで許可がとれそうにないため、そういう点では『中山美穂のトキメキハイスクール』よりも移植は絶望的かもしれない。ただ、大ヒットタイトルなので中古ショップで入手しやすいというのは、唯一の救いかもしれない。ネタ的な話題になるけど、いいゲームですよ。
という訳で、今回はここまで! 次はそろそろRPGを紹介したいところ。RPGといえば……そう、あのタイトルを紹介したいと思います! 次回「ここまで煽って、そのタイトルかよ!」にご期待ください!