ゲームで適当に遊ぶ

ファミコン中心に、いろいろなゲームを遊んだ感想とか適当に

犯人は知ってるけど展開知ってる人は少ないよね

 ちょっと間が開いてしまったけど、4月最初の更新! 今回はちゃんと予告通りのタイトルを紹介するぜっ!

 ということで、第13回はこのゲーム!

ポートピア連続殺人事件

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  オリジナルは1983年にPC-8801用とPC-6001用として発売されたアドベンチャーゲームで、今回紹介するのはそのファミコン移植版。ファミコン版の発売は1985年11月29日で、ファミコン初のアドベンチャーゲームの栄冠を手にしている。ゲームデザインは、のちにドラゴンクエストのメインデザイナーとして日本中の子供を興奮の渦に巻き込む堀井雄二氏。このときはゲームデザインだけでなく、グラフィックやプログラミングも堀井氏ひとりでこなしていたり。ゲーム黎明期の分業制が進んでいない時代ならでは……だけど、堀井氏の多彩さを物語るエピソードでもあります。

 

 

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 オリジナル版は当時主流だったコマンド入力型(キーボードを使ってコマンドを入力する)だったけれども、移植するときに北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆで採用されたコマンド選択式に変更。これにより、ファミコンのコントローラでもアドベンチャーゲームが遊びやすくなり、このあとに様々な名作/迷作アドベンチャーゲームファミコンでリリースされるように。余談だけど、一部では「ファミコン版のポートピアはファミリーベーシック専用ソフトになる」といううわさが流れていたとか。それだけ「アドベンチャーゲーム=コマンド入力式」という図式が成り立ってたんですな。ちなみに、この手のうわさは88年のウィザードリィ発売時にも流れていたとか。

 

 また、文字数と容量節約のためカタカナは20文字しか使用されていないので、一部の証拠品の名称が変更(ペンダント→ゆびわ)になったり、文言が変わったり。あと、タイトル画面のエニックスがひらがなになっていたりとか。この辺の節約による変更や努力はこの頃のゲームの特徴でもあり、のちに堀井雄二が制作指揮を執るドラゴンクエストでも涙ぐましい容量節約が行われることになるのだけど、それは別の話。

 

 

  そして、犯人は有名だけれども、意外と知られていないのがストーリー。死んだのが山川耕造までは知っていても、ストーリー中で何人が殺されるのか、容疑者はどれだけいるのか……などを知っている人は結構少なかったり。なんせ、PC版では冒頭にじけんのあらましを解説する文章があるのだけど、ファミコンではそれがまるっとカットされているのだ! 説明書を読んでもらえればあらましは理解できるから、そのぶんの容量を使って……ってことなんだけど、とんでもない話だよね。黎明期だからこそ許される力業なのは間違いない。というわけで、詳しいあらましはファミコンの説明書を多く掲載している「げーむのせつめいしょ(仮) 〜ゲームをより楽しむために、説明書を読もう!〜」様で公開している「ポートピア連続殺人事件 〜げーむのせつめいしょ(仮)〜 (ファミコン編)」のページを見てもらうとして、ざっくり解説すると

 

 悪徳サラ金「ローンヤマキン」の社長・山川耕造。そんな彼が自宅で死んでいたのを屋敷の守衛と秘書に発見される。死体が発見された書斎は内側から鍵がかかっており、完全な密室だったため、自殺だと判断された。しかし、他人を追い詰めて自殺に追い込むような人物として有名な山川社長が自殺するとは思えない。刑事である俺は、山川社長が他殺だとにらんで部下のヤスとともに捜査を開始した……。

 

 と、こんなお話なのよね。そして、ここからさまざまな事件が展開していくのだ。

 

 

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 登場人物は耕造の甥で無職の山川俊之のほかにも、第一発見者である耕造の秘書・沢木文江と屋敷の守衛(PC版ではマンションの管理人)である小宮六助、耕造に多額の借金がある八百屋の平田とその娘・由貴子(このキャラはPC版にいない)、さらにはかつて山川と組んで悪事を働いていた詐欺師の川村など、名前しかでない人物も含めて怪しい人物ばかり。これらの登場人物に対して証拠品や証言を突きつけて取り調べを行い、現場や周辺で聞き込みをして情報を集め、事件の真相に迫っていく……というオーソドックスな作りになっている。

 

 ……といいたいところだけど、実はこういうミステリーものって当時は珍しかったりする。当時のアドベンチャーゲームは「閉鎖空間からの脱出」か「隠された財宝を探し出す」のが2大潮流であり、また、ファンタジー世界やSF世界が舞台になることが多かった。もちろん、ミステリーものや現代を舞台にしたゲームがなかった訳ではないのだけど、実在の地名が出てきて数々の人間ドラマを織り成す本作は、間違いなく少数派のゲームだったのだ。堀井氏は「謎解きではなくドラマを描きたかった」という思いからこのゲームを製作したらしいけど、この辺、劇画村塾(故・小池一夫氏が運営していた漫画家・漫画原作者養成を目的とした私塾)出身者というのが大きいのかもしれない。

 

 

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 事件の真相に迫るには、やっぱりステップを踏んで一歩ずつ解明していかないといけない。なにが証拠になるかわからないので、手に入るものは片っ端から手に入れ、容疑者たちに突きつけ、細かく聞き込みをして情報を仕入れていく必要がある。捜査の過程で新たな殺人事件に2件も出くわすけど、それらの真犯人も耕造殺しの真犯人と同一人物。しっかり調べて追い詰めていきたい。

 

 

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 実はフラグ管理はかなりガバガバ柔軟な構造になっていて、必要なフラグだけ立てていけば不要な取り調べや証拠品収集をしなくてもいいというのが面白いところ。俊之の麻薬取引やそれにともなう暗号解読(コメイチゴ)、それどころか新たに発生した殺人事件の取り調べもスルーして真犯人発見に向けて突き進むことができるのだ! PC版はもっとすごく、開始直後の5手で真犯人にたどり着けるらしいが、事件の内容はまったくわからないとか。やっぱりズルというか手抜きはダメなんだね。

 

  

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 特定のポイントを調べたり、特定の電話番号にかけると特殊なメッセージが聞けるというのも当時としては割と画期的で、本作以降に「特定ポイントをしらべる」「電話をかける」というコマンドがあるゲームには、イースターエッグ的に特殊メッセージが仕込まれていることが多かったり。まぁ、今ではテキストアドベンチャーが主流になって、こういうコマンド選択式アドベンチャーもほとんどリリースされなくなってしまったけど……。ああ、諸行無常

  

 電話の話が出たついでに。実は、本作は特定のフラグさえ立っていれば電話番号をゲーム内で入手しなくても、目的の相手に電話をかけることができる。この仕組みを利用すると、大幅にゲームのショートカットが可能になるとか(地下迷宮を除き、約60手ほどでクリアできるとか)。

 

 

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 また、電話というと、当時の少年たちにとってもうひとつのポートピアネタだった「コメイチゴ」の存在がある。これは俊之の麻薬取引に関する暗号なのだが、実は機種によって暗号が異なっていたり。そして、その解読難易度は難易度は天と地との差があったとか。鏡文字を利用したPC-8801版やプッシュボタンを使ったファミコン版はかなり簡単な部類に入り、数字をひらがなに変換するMSX版や文字スライド暗号を利用したFM7版、アルファベット+3ケタの数字でひらがなを表現しているPC-8001版は、ヒントをよく読めば解けなくもない程度の難易度。しかし、PC-6001の16進数をアルファベットに変換する必要があるPC-6001版や、音階と音符を対応するひらがなに変換する暗号のX1版などは高難易度の部類に入り、多くのプレイヤーを悩ませたという(PC-6001版をプレイするようなユーザーなら16進数ぐらいすぐに思い至るという考えだったのかもしれない。憶測にすぎないけれども)

 

 

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 ファミコンオリジナルなのはコマンド選択式だけでなく、耕造の屋敷の地下に広がる迷宮もオリジナル要素だったり。当時、海外や国産のRPG、特に『ウィザードリィ』にハマっていたらしい堀井氏は、その要素を最後発(当時)であるファミコン版に組み込んだんだろうな、というのは想像に難くない。その証拠に、ある地点に行くと『ウィザードリィ』由来のおふざけメッセージが表示されるのだ。

 

 このファミコンオリジナルの地下迷宮はかなり本格的な3Dダンジョン(おそらくファミコン初の3Dダンジョン)で、風景に変化が乏しいモノクロの背景と相まって難易度は非常に高い。しかも、一方通行まで仕込まれているという念の入れよう。たぶん、ここで挫折したプレイヤーも多いんじゃないかな? 実のところ、この地下迷宮はスタート地点から右手法(右手を常に壁につけたまま歩く)で問題なく金庫までたどり着ける仕組みになっていたり。事件の真相に迫る隠し部屋に関しては右手法ではたどり着けず、また、出入口に戻ることはできないけれど、隠し部屋への道にはヒントがあるのでそれを頼りに進むしかない。隠し部屋からの脱出は……あとは頑張れ!

 

 

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 見事、フラグをすべて立て終わったら、お待ちかねの「なにかとる>ふく」の3連続入力。そうすれば、ヤスがすべてを自白して事件は幕を閉じる。過程は自分の目でたしかみてみろ! ただ、今回プレイしなおして思ったのは「結局のところ、ボスがヤスを犯人だと決定づけた証拠はないよね?」だったり。肩にあるちょうちょの形のあざを見られて観念した……という解釈でいいんかね、これは?

 

 

 

 ミステリー系アドベンチャーゲームとしては最初期の作品だっただけに手探りの部分も大きく、3D迷路のようなアドベンチャーゲームからかけ離れた要素もある本作。犯人の名前だけはやたら有名なものの、その犯人にたどり着く経緯などは忘れられがちだったりと、知名度の割りにゲーム内容そのものの話はされないという不幸な一面もあったり。現状、本作をプレイするには実機でしか無理というのも、この伝説を流布させる大きな要因なのかもしれない(10年ぐらい前まではフィーチャー・フォンのアプリで遊べたのだけど)。実機プレイ環境を整えて……は難しいので、『ファミリーコンピュータスーパーファミコンNintendo Switch Online』で配信されれば……と思うことしきり。ネタになっている部分も多いけど、面白いんですよ?

 

 

 そういう訳で第13回もここで終了! ここのところ80年代中盤のソフトが続いたので、ここらで90年代のゲームを紹介したいところ! でも、なにがいいんだろう? やっぱり原作モノとかがいいのかなぁ? それともタイトルだけは有名な作品とか。