1月中に更新しようと思っていたのに、放置しっぱなしになってしまった。更新頻度が落ちたとしても、せめて1年は続けようね……ということで、ようやく更新! 二転三転した結果、今回紹介するタイトルはこれ!
探偵 神宮寺三郎
新宿中央公園殺人事件
1987年4月27日発売のアドベンチャーゲームで、開発・販売はデータイースト。同時期のゲームはファミコンだと『さんまの名探偵』『熱血硬派くにおくん』『愛戦士ニコル』『ファミリージョッキー』『アルゴスの戦士 はちゃめちゃ大進撃』『森田将棋』など。アーケードだと『SDI』『スーパーハングオン』『妖怪道中記』『忍者くん 阿修羅の章』なんかがリリースされた時期でもあります。
データイーストが消滅したあとも権利を引き継いだメーカーが発売を続けている息の長いシリーズで、携帯アプリ版も入れると20作近くのタイトルが作られていたり。小説も8冊ぐらいリリースされているのかな? イメージよりも大きく展開しているシリーズで、もしかしたら日本を代表するアドベンチャーゲームタイトルなのかもしれない。
発売当時、『ファミコン通信』(現:ファミ通)では大々的に紹介されていた本作(おそらくは広告記事)。その記事で「神宮寺三郎は実在の人物をモデルにしていて、実際に新宿で探偵をしている」みたいな記述がなされていた記憶がある(ご丁寧にも、薄暗い探偵事務所でタバコをくゆらせる神宮寺の写真つき!)。そのせいで、数年が経過するまで自分は神宮寺三郎が実在すると信じていたのよね。なんという純真な。
ある日、新宿中央公園に絞殺死体が捨てられているのを管理人が発見する。被害者は新宿のバー・イーストのホステスである高田桃子。死体発見現場は芝生をはがした土の上で、前日から降り続いていた雨の影響でぬかるんでいたのだが、足跡は残っていなかった。開放的な屋外空間であるにもかかわらず事実上の密室殺人という矛盾により、捜査は難航。頭を悩ました淀橋署(東京警視庁新宿署の旧称。ただし、ゲーム発売の20年ほど前に新宿署へと改称している)の警部・熊野は新宿歌舞伎町を根城にする旧知の探偵・神宮寺三郎へと捜査協力を依頼する……というのがあらすじ。
システムとしては『ポートピア連続殺人事件』や『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』などで採用されて、アドベンチャーゲームのデファクトスタンダードになった選択式コマンド入力型。コマンドに「おどす」や「タバコを吸う」など変わったものも存在し、これらを使わないと切り抜けられない場面もある。ちなみに「タバコを吸う」は、今まで積み重ねてきた捜査を手掛かりに、状況打破の糸口をひらめくというもの。第1作である本作では一風変わったコマンドでしかなかったものの、続編がでるにつれてシリーズの特徴として扱われていくというのも面白い。
捜査は証言や証拠を集めて真相に迫っていくという、事件解決型アドベンチャーの基本にして王道のパターン。ただし、状況によっては選んではいけないコマンドがあり、それを実行すると即ゲームオーバーになってしまう。平たくいうと「警察とヤクザをからかってはいけない」ってことね。あと、本作は時間が設定されていて、ゲームを中断したりすると日数が経過する。30日になると捜査打ち切りとなり、これまたゲームオーバーになってしまう。ゲームオーバー多いな、このゲーム!
ちなみに日数はゲームオーバーまでのリミットだけでなく、「交代制の勤務をしているため、特定の日付にしかいない参考人」という演出にも使われている。具体的には交番(当時は派出所)勤務の警官とかね。
そして、このゲームの特徴にして”詰まりポイント”として有名なのが新宿中央公園。このなかではRPGのフィールドのように見下ろし型マップになり、自由に探索できるようになるのだ。そこらへんにいる人や犬などに話しかけるとRPGのようなコメントが返ってくる不思議ポイントでもあり、寺田克也による渋いキャラクターたちが印象的な操作画面とのギャップが大きいパートだったりする。
そして、ここで一番のトラップは、なんといっても「交番の位置がわからない」ことだろう。交番で話を聞かなきゃいけないのだけど、それらしい建物はどこにもないのだ。「北西にある」という情報を手掛かりに探すのだけど、これが見つからずに詰んだプレイヤーも多いはず。外周にでて特定のポイントであたりを見回すと発見できるんだけど、本当に「何もない場所」を調べる必要があるのだ。しかも、発見できる範囲はとても狭い。つらい。なお、この「何もない場所を調べる」という捜査は、もう1回やる必要がある。シリーズ初期としても、これはもうちょっと考えてほしかった。
バーの店長、ヤクザの親分、桃子に執心だった常連、恋人など、次から次へと浮かび上がってくる容疑者。どいつもこいつも怪しい人物ばかりだが、みんな意外とアリバイがあって容疑者候補からははずれていく。きちんと捜査していれば……だけどね! ちなみに、神宮寺以外の登場人物は、新宿周辺や新宿に関連した名字になっていたり。
御苑洋子:新宿御苑
熊野参造:十二社熊野神社(新宿総鎮守)
高田桃子(被害者):高田馬場
大塚恵子(桃子の同僚):新宿区上落合周辺の旧町名(山手線の駅名とは違う)
代々木一(バー・イーストの店長):代々木
風林豪造(明治組組長):歌舞伎町風林会館
柏木大介(桃子を気に入っていた資産家):北新宿周辺の旧町名
花園町子:花園神社
角筈一郎:西新宿から歌舞伎町にかけての旧町名
西口(K大学にいる学生):新宿西口
伊勢警官:新宿伊勢丹
大久保(公園管理人):大久保
ホテル従業員の中野、阿佐ヶ谷は新宿関連ではないけど地名由来(中野区の地名)。フロントの京だけは由来がよくわからないけど、もしかして京王ホテルなのかな?
証言と供述のちょっとした矛盾点から事件は一気に進展。事件とは無関係だと思われた人物が一気に重要参考人へと変貌するのは、まるで2時間サスペンスドラマを見ているかのよう。最後は証言を集めて犯人を熊野警部に告発すれば、見事エンディング。そして、伝説のトリックが供述される……。
利害が一致した2人の共謀によって桃子が殺害されたことがわかるものの、「開放された空間での密室殺人」という難解な事件をトンデモトリックで実行したことまで白状しはじめ、ツッコミがとまらなくなる。というか、本当にこのトリックでいけると思ったのか開発スタッフ! このトリックのせいで、黎明期独特の少し荒い作りのアドベンチャーゲームでしかなかった本作は「伝説のトリックが展開されるバカゲー」として後世に名を轟かせることになってしまった……。まぁあまりにもあまりなトリックだったせいで、リメイク版(『探偵 神宮寺三郎DS いにしえの記憶』やアプリ版など)では真犯人やトリックが変更されることになるんだけど、それはまた別のお話。
それはともかくとして、新宿一帯に土地を持つ資産家の遺産が5億というのは時代を感じるね。発売当時はちょうどバブル景気が始まったばかりで、シナリオが書かれたと思われる86年は土地高騰はそこまでではなかったのだ。もし、発売が1年遅れたとしたら、代々木が残した遺産額は10倍以上になってたかも。
顎がかくーんとなるトリックはともかくとして、終始ハードボイルドな雰囲気漂う作風は一定の支持を集め、プラットフォームの変更や休止期間を経て現在もシリーズが続いているというのは見事としかいいようがない。リメイク版が発売しているものの、オリジナル版もWiiのバーチャルコンソールやPSのゲームアーカイブ(『アーリーコレクション』として)でプレイできるのはうれしい限り。というか、ディスクシステムは実機が用意しにくいんだよね……。ハードウェア(ディスクシステム)もだけど、ディスクカードが死んでる可能性があるんだよね。意外と弱いんだ、あのメディア。
久しぶりということで、今回は短め! 次回はそこそこがっつりやりたいところだね! 意図せずに連続で殺人事件モノを扱ってしまったので、シューティングとかアクションとか、そういうのでもいいなぁ。たとえば、移植されたメディアごとに意外と違が存在する「あのゲーム」とかね。あるいは長くなるけどRPGとか……。それともさくっと更新するために、黎明期の名作ゲームにするか。夢だけは広がる。更新は遅れる。どっとはらい。とっぴんぱらりのぷう。