放置に次ぐ放置。だけど、決してエタった訳ではない! ということで、第36回はアーケードゲームから移植されたこのタイトル!
オリジナルは1985年7月に稼働を開始したアーケードゲームで、開発・販売はジャレコ。当時としては下火になっていた、かつての人気ジャンル・ドットイートゲームを横スクロールアクションゲームにアレンジした作品で、双方向横スクロールの無限ループ構造になったステージが特徴となっている。タイトルは時期的にエマニエル・ルイスことエマニエル坊やが歌うヒット曲『シティ・コネクション』が元ネタだと思うのだけど、実際はどうなんだろう? 教えて偉い人!
主人公は15歳の少女クラリス。1985年という年は、公開当時はそこまで評判は芳しくなかった『ルパン3世 カリオストロの城』の評価が時を経るにつれて上がっていき、不動の人気作になった頃。さらには『風の谷のナウシカ』が公開された翌年の稼働なので、この名称は割と“意図的”だと思ってるのだけど。真相はわからんけどね。
自機となるクラリスカーは、当時若者を中心にブームを巻き起こしていた本田技研の軽自動車『ホンダ・シティ』がモチーフ。イギリスのスカ・バンドであるマッドネスを起用したCMも話題になった、革新的な軽自動車だったんですよ。んで、クラリスカーは初代AA型がモチーフと書かれることが多いけど、ポスターなどのイラストに描かれたクラリスカーにはボンネットのパワーバルジや片方に寄っているフロントグリルなどの特徴があるので、実際は『ホンダ・シティ ターボ』なんじゃないかと思ってるわけなんですよ、自分としては(「ブルドッグ」ことターボⅡだとボンネットのパワーバルジの形状が違うので)。まぁ一応ターボも初代でくくられてるので、間違いではないけど。
ステージは長さの違う4段の足場で構成されていて、すべての足場を塗りつぶすとクリアとなって次のステージへと移行。各ステージは世界の名所になっていて、全12カ所をめぐる観光ゲームとしての側面も持っている。そして流れるBGMは、ピョートル・チャイコフスキー作曲『ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 作品23』のアレンジ。ロック調だったりカントリー風だったり民族舞踊ぽかったり、原曲は1つだけなのに幅広い編曲で聞かせるのも本作の魅力だったりする。
ステージ中に登場するパトカーは、接触するとミスに。時間経過とともにパトカーはどんどん増えていき、クラリスカーの行く手を塞ぐのだ。ただ、ステージに落ちているオイルをぶつけてから接触すれば、弾き飛ばして得点に! スコア稼ぎの方法は事実上これしかないので、隙あらばパトカーを弾き飛ばしたいところ。
また、パトカー以外にも、おじゃまネコとタケノコというおじゃまキャラも存在。おじゃまネコは時折進行方向に出現して、クラリスカーの行く手を遮る。これに触れるとミスになり、おじゃまネコは『猫踏んじゃった』のBGMとともに彼方へと吹っ飛んでいく……。タケノコは同じ床を走り続けていると、地面から突然生えてくる。もちろん触れるとミスに。接近するまで引っ込んでいるので、事故が多いんだ、これが。ちなみに、おじゃまネコはスクロールで消せるけど、タケノコは消せない。世知辛い。
スコアは通常得点と走行距離の2種類が存在。通常得点は、床を塗りつぶしたりパトカーを弾き飛ばすと獲得。また、ステージクリア時には、所持していたオイル缶×100点も加算される。クラリスカーは通常得点でエクステンドするので、積極的に獲得を狙っていきたいところだ。一方、走行距離は文字どおりクラリスカーが走った距離。特に意味はない数値だが、ゲームオーバー時のハイスコア入力画面にも記録される。走行距離はゲームを長くプレイした時間でもあるので、ハイスコア以上にプレイヤーの腕前を示す指針なのかもしれない。
全12ステージで、12面をクリアすると1面に戻る仕組み。ステージ中に登場する風船を3つ集めるとランダムで先のステージにワープでき、オイル缶1つにつき3000点のボーナスが入る。ワープして損することは基本的にない(途中のステージが見られないぐらい)ので、ハイスコアを狙うならば風船は絶対に取り逃せない。
ニューヨークからスタートして、イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、エジプト、インド、中国、日本、オーストラリア、中南米、モニュメントバレーと回るコース。自由の女神やビッグベン、凱旋門&エッフェル塔、チューリップ畑と風車などはともかくとして、当時の日本ではそこまで知名度は高くなかったと思われるノイシュヴァンシュタイン城があるのが味わい深い。あと、エジプトもパターンであるピラミッドとスフィンクスではなく王家の谷というのが驚き。
あと、一部ではイギリスにいる緑髪の女性が『うる星やつら』のヒロインであるラムという説がある。後ろ姿だけなので真相は不明だけど、当時のジャレコはBGMがまんま「ラムのラブソング」だった『モモコ120%』がリリースされたり、それのファミコン移植版が『うる星やつら ラムのウェディング・ベル』だったりしたので、あながち間違っていない気がしてしまう。これも真相を知りたいところだね。
隠しフィーチャーも豊富で、特定地点でオイルを投げたりすると発生する。ニューヨークではヘブラム(ジャレコ『フォーメーションZ』の敵キャラ)が出たり、日本ではウサギがでたり。大体は1UPだったり風船の代わりだったりするんだけど、インドでは背景が夕陽になったりするというフィーチャーも。各ステージに1つずつ仕込まれているらしいけど、全部の出し方は知らない。誰か教えて!
と、ここまではアーケード版のお話
ファミコン版の発売は1985年9月27日。なんと、アーケード版稼働開始から2カ月足らずで移植されているんですよ! 同時開発だったんだろうけど、これは割と凄い事ですよ? 当時はおろか、90年代でも聞かないスピード移植。すごいぞジャレコ。ちなみに、同時期発売のファミコンソフトは『プーヤン』『ハイパースポーツ』。そして『スーパーマリオブラザーズ』。同時期のソフトはどれも割とヒットしている印象。ひとつだけ飛びぬけちゃってるヤツがあるけどね……。
ステージ数は6(ニューヨーク、イギリス、フランス、ドイツ、インド、日本)に減っていたり、塗りつぶし床が8ドット単位になっていたりとタイニー移植感は否めない。だが、プレイ感覚はあまり変わらず、割と頑張っている移植ゲームなのだ。ちゃんと褒めて遣わす(偉そう)。というか、ファミコン版、基本的に「頑張って移植した」関係で、アーケード版とそんなにいうことが変わらないのよね……。
ちなみに、タイニー移植感があっても隠しフィーチャーはきちんと再現。あと、ファミコンだけのフィーチャーっぽい(もしかしたらアーケード版にも組み込まれているかもしれないけど、ヘタクソだから出せない)けど、フランスでは特定条件(最上段をすべて塗りつぶしてから、最上段でダブルショットをする)を満たすと彗星が画面を駆けるという隠し要素も。ちなみに、1985年当時は翌年の1986年4月にハレー彗星が76年ぶりに最接近するということで盛り上がっていた時期なんです。こういうところに時事ネタが仕込まれていると、あとから振り返るときにいろいろ盛り上がるんですよね。
んでもって、NES版のお話。いわゆるNintendo Entertainment Systemでも本作は発売されているんですよ。発売は1988年5月。基本的な仕様はファミコン版と同じなんですが、なぜかクラリスが謎の金髪リーゼントになっているのだ! もしかしたら、『ゲーム天国』の金髪ショートカット巨乳な偽クラリスは、このNES版キャラクターをモチーフにしているのか!? そんなはずはないか。
ちなみに、ゲーム的な違いはファミコン版とNES版に大きな違いはなく、隠しフィーチャーももちろん入っていたり。細かい違いとしては
・走行距離がマイル表記に
・タイトル画面の変更
・リザルト画面の変更
などがあったりする。なお、タイトル画面でSELECTボタンを押すと、金髪リーゼントがクソムカツくアニメーションをする。絶妙にイラっとするんだ、これが!
クセがあるアクションの影響か、画面から受ける印象以上に難易度が高い作品。だけど、ついついプレイしてしまう味わい深さもあり。個人的には、ジャレコのゲームのなかではトップクラスに大好きです。のちにG-MODEで正統続編である『シティコネクション・ロケット』がリリースされたり、本作が好きすぎる人が興した会社に本作タイトルをつけたり(ゲーム会社「シティコネクション」は本作由来なんですよ!)と、同じような愛好者は多い印象。現在ではオリジナル版はゲームアーカイブスで、ファミコン版はファミリーコンピュータ Nintendo Switch Onlineや3DSのバーチャルコンソール、プロジェクトEGGで配信されているため、遊ぶ手段も豊富。しかもG-MODE『シティコネクション・ロケット』もSwitchで配信されたという驚きの展開だ。ジャレコという会社こそ消えたけれども、遺したものは確実に愛されている。そう思う今日この頃。
そういう訳で、放置しまくりで更新間隔が空いてしまった第36回もここまで! 今度こそ、間を開けず更新したいところ。思っていてもすぐにはできず……。なんとも悩ましいね! ファミコンだけじゃなく、最新ゲームとかもやったほうがいいのかな?
次回は任天堂の初期作か、「シリーズがたくさん作られてるアノ作品」の3作目とか、「システムは変わらないのに、シリーズが進むと方向性が全然変わった作品」の1作目とか、「海外ゲームを移植する際に、無理やり別IPのガワをかぶせた」あのゲームとか、候補はたくさんあるんだけど、どれになるやら……。